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といった悩みや疑問を抱えている人に向けて、
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経済指標とは
- 経済指標とは、政府や中央銀行、民間機関によって定期的に公表される
国や地域の経済状況を表す統計データのことです。
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経済指標は、経済の現状や将来の見通しを分析するために不可欠であり、政策立案や投資決定に幅広く利用されています。金融市場においては、経済指標によって株価や為替の価格が大きく動くことがあり、投資家やトレーダーにとって重要な情報源となっています。
FXに関係する経済指標はその性質に応じて以下のように分類されます。
雇用・失業指標は、労働市場の動向を示す重要な指標です。雇用者数の増減や失業率の動きは、個人消費を通じてGDPに大きな影響を与えるためです。また、賃金の伸びからインフレ率の見通しもつかめます。
代表的な指標として、米雇用統計、ユーロ圏失業率などがあげられます。
米雇用統計は、FRBの金融政策判断材料として重視されています。雇用・失業指標は、経済活動全体を占う上で重要な意味を持つため、発表時の市場の反応は常に大きくなります。
景気指標は、国内の経済活動全般の動向を示す指標です。GDP統計をはじめ、生産や消費、投資などの実物経済の動きが分かるため、景気の現状と先行きを占う上で欠かせません。
主な景気指標には、GDP統計、鉱工業生産指数、小売売上高、設備投資があります。
景気指標の内容から、経済成長率の修正が見込まれれば、金融政策の見直しにもつながるため、市場の注目は非常に高くなります。
物価指標は、価格の動向を占う上で重要な指標です。インフレ率の変化は、金融政策の転換を促す大きな要因となるためです。
代表的な物価指標としては、消費者物価指数(CPI)、生産者(企業)物価指数(PPI)があげられます。
各国中央銀行はこれらの数値を重視します。米国の中央銀行に当たるFRBは個人消費支出(PCE)デフレーターをインフレ指標として重要視しています。物価指標の動向は、インフレ抑制のための金融政策判断に大きく影響するため、指標発表時の市場の反応は常に大きくなります。
金融政策(政策金利)指標は、中央銀行の金融政策スタンスを占う材料となります。
FOMCなどの金融政策決定会合の内容やスピーチ内容など、中銀の政策行動を示唆する発信は、金融市場にとって最重要の情報源となるためです。
FOMCや欧州中央銀行理事会の声明文、議長など重要人物の講演などが代表的なものとしてあげられます。
中央銀行の金融政策が市場に与える影響は絶大で、政策スタンスに関する発信は常に神経を尖らせる必要があります。
経済指標が公表されると、そのデータが市場の予想とどのように異なるかによって、株価や為替レート、金利などの金融資産の価格が大きく動くことがあります。特に、予想外のデータが出ると、市場に大きなサプライズを与え、短期的に価格のボラティリティが増すことが一般的です。
例えば、2024年5月3日(日本時間21時30分)に米国の雇用統計が発表されました。
上図のように予想よりも数値が悪くドルが売られました(利下げ観測による米金利の低下による)。
この雇用統計ではおよそ5分間にドル円価格が133pips(1円33銭)下落しており、短期で小さな値幅をトレードをしている人にとっては特に影響が大きいです。
世界各国で発表される経済指標には、国によって重要視されるものが異なりますが、一般的に注目されるのはGDP、失業率、インフレ率、中央銀行の金利決定などです。
国ごとの主要な経済指標と発表日、内容をまとめました。
指標名 | 発表日時 | 内容 |
---|---|---|
ISM製造業景況指数 | 毎月第1営業日 | 製造業の活動状況を示す指標。50を上回ると景気拡大を示す。 |
雇用統計 | 毎月第1金曜日 | 前月の非農業部門雇用者数の変化、失業率など労働市場の状況を示す。 |
新築住宅着工件数 | 毎月中旬 | 新しく建設が始まった住宅の件数。住宅市場の活況を示す。 |
消費者物価指数(CPI) | 毎月中旬 | 消費者が実際に支払う価格の変動を測る物価指数。 |
個人消費支出(PCE) | 毎月下旬 | 個人消費の伸び率を示す。 PCEコア指数は物価上昇率の重要な指標。 |
耐久財受注 | 毎月下旬 | 企業の設備投資需要を示す指標。 |
GDP | 四半期の第1か月 | 前期の実質GDP成長率が発表される。 |
指標名 | 発表日時 | 内容 |
---|---|---|
日銀短観(全国企業短期経済観測調査) | 四半期ごと | 企業の景況感を示す。先行きの業況判断も含まれる。 |
消費者物価指数(CPI) | 毎月下旬 | 消費者が実際に支払う価格の変動を測る物価指数。 |
失業率 | 毎月下旬 | 労働力人口に占める完全失業者の割合を示す。 |
鉱工業生産指数 | 毎月下旬 | 鉱業・製造業の生産活動の状況を示す。 |
機械受注 | 毎月中旬 | 民間企業の設備投資需要を示す指標。 |
貿易統計 | 毎月下旬 | 輸出入額の状況を示す。貿易収支も発表される。 |
GDP | 四半期の第1か月 | 前期の実質GDP成長率が発表される。 |
指標名 | 発表日時 | 内容 |
---|---|---|
ユーロ圏消費者物価指数(HICP) | 毎月下旬 | ユーロ圏の消費者物価の変動を測る指標。 |
ユーロ圏失業率 | 毎月下旬 | ユーロ圏の労働力人口に占める失業者の割合。 |
ユーロ圏鉱工業生産指数 | 毎月下旬 | ユーロ圏の鉱業・製造業の生産活動の状況を示す。 |
ユーロ圏建設生産指数 | 毎月下旬 | ユーロ圏の建設業の活動状況を示す指標。 |
ユーロ圏小売売上高 | 毎月下旬 | ユーロ圏の小売業の売上高の動向を示す。 |
ユーロ圏経常収支 | 毎月下旬 | ユーロ圏の経常収支(貿易収支など)の状況。 |
ユーロ圏GDP | 四半期の第1か月 | 前期のユーロ圏の実質GDP成長率が発表される。 |
指標名 | 発表日時 | 内容 |
---|---|---|
英国消費者物価指数(CPI) | 毎月中旬 | 消費者物価の変動を測る指標。 |
英国雇用統計 | 毎月中旬 | 雇用者数、失業率などの労働市場の状況。 |
英国鉱工業生産指数 | 毎月中旬 | 鉱業・製造業の生産活動の状況を示す。 |
英国生産者物価指数 | 毎月中旬 | 生産者が支払う価格の変動を示す指標。 |
英国サービス業活動指数 | 毎月下旬 | サービス業の活動状況を示す指標。 |
英国月次GDP | 毎月下旬 | 月次GDP成長率が発表される。 |
英国GDP | 四半期の第1か月 | 実質GDP成長率が発表される。 |
指標名 | 発表日時 | 内容 |
---|---|---|
消費者物価指数(CPI) | 四半期ごと | 消費者物価の変動を測る指標。 |
雇用統計 | 毎月中旬 | 雇用者数、失業率などの労働市場の状況。 |
鉱工業生産指数 | 四半期ごと | 鉱業・製造業の生産活動の状況を示す。 |
GDP | 四半期ごと | 実質GDP成長率が発表される。 |
輸出入物価指数 | 四半期ごと | 輸出入価格の変動を示す指標。 |
貿易収支 | 毎月下旬 | 輸出入額の状況と貿易収支が発表される。 |
政策金利 | 毎月上旬 | オーストラリア準備銀行(RBA)の政策金利決定会合の 結果が発表される。 |
短期売買のEAを留めるべき理由
・平時の数十倍の値動きになる可能性がある
・スプレッドが広がり、取引コストが増加
これについては、上記で示した2024年5月の雇用統計発表時の画像で確認できる通り、発表直後は5分間で130pips程の値動きがあります。
平時のドル円の変動は5分間では5~15pips程度であり、値動きが数十倍になります。
短期売買をするEAでは、平時と違う急激な変動には対応できるものは少なく、EAは停止するべきと言えます。一方で長期売買のEAは比較的値幅を大きく設定していることが多く、EAを停止しなくても問題ないものもありますが、リスクを抑えたい場合は停止することをオススメします。
経済指標発表時はボラティリティが大きくなることに加えてスプレッドも拡大しコストが増大します。
スプレッドとは、買い価格と売り価格の差のことで、トレーダーにとっては取引コストとなります。
例えば2024年5月3日の雇用統計発表時におけるスプレッドは下図の通りです。
グラフにはXMで提供されている各口座のドル円のスプレッドを1tickごとに計測した結果の1分ごとの平均値をプロットしています。
Standard口座では平時には2.7pips程度のスプレッドでしたが、雇用統計発表で一時4.2pips程度となっており、1.5pipsスプレッドが広がっていることが分かります。他の口座も同様の傾向です。さらに一度指標が発表されるとスプレッドは発表前に水準には戻らず、徐々に上昇(21:30~23:15)していることが分かります。
上記のスプレッドは全体的な傾向を見るために1tickごとのスプレッドを1分ごとに平均していましたが、実際の取引では取引する時のスプレッドが重要であり、スプレッドの変動が重要となります。
そこで、時間ごとの変動(標準偏差)を見てみたいと思います。
スプレッド変動も当然ながらボラティリティが大きな経済指標発表時に増加していることが分かります。
さらに、上図の各線に口座の種類による差異がないことが分かります。これはXMの場合にはスプレッドの変動は口座の種類によらず一定になっていると言えます。
このため経済指標の発表時にはスプレッドが小さいもの(Zero→KIWAMI→Standard)のほうが相対的に影響が大きいです(変動係数が大きい)。
例えば、Standard口座は2.7pips程度に対して1.75pips、すなわち、0.65倍(1.75/2.7)となります。一方でZero口座は平時がのスプレッドは0.5pipsなのに対して変動が1.75pipsとなっているため3.5倍(=1.75/0.5)と相対的な影響が大きいです。
このように経済指標の発表は金融市場に大きな影響を与え、スプレッドが拡大することが実データから分かりました。
ではなぜ、スプレッドは広がるのでしょうか?
スプレッドが拡がる理由は
経済指標の発表は、市場のボラティリティを急激に高める要因となります。
ボラティリティが高まると、価格の予測が困難になり、トレーディングリスクが増大します。
特に重要な指標が予想と違っていた場合、短期間で価格が激しく動くことがあります。
このような状況では、市場参加者が即座にポジションを調整しようとするため、ボラティリティ(売り買い)が増加します。
このような予測不能な急激な価格変動の発生によりディーラーやブローカーはリスクを避けるためにスプレッドを広げる傾向にあります。
ボラティリティが高い相場での取引は、想定した価格で取引が成立せず、大きな損失につながるリスクがあり、ブローカーはスプレッドを拡大させることでそのリスクを補填しようとします。
また、スプレッドを通じて取引コストを増加させることで、過度な取引を抑制し、市場の安定を図る側面もあります。
ここからは、実際の市場データを使用して経済指標発表時の価格の変動とスプレッドの変動を観察していきます。
今回はドル円の価格を計測し、米国と日本の経済指標との関係を分析します。
対象とした指標と発表直後1分の値動き、スプレッドは以下の通りです。
赤色は米国指標、水色は日本指標です。
日時 | 経済指標 | 値動き (pips) | スプレッド平均 (pips) | スプレッド標準偏差 (pips) |
---|---|---|---|---|
2024/4/18 21:30 | フィラデルフィア連銀景況指数 | 16 | 3.1 | 0.48 |
2024/4/18 23:00 | 中古住宅販売件数 | 4.9 | 2.6 | 0.15 |
2024/4/23 22:45 | 製造業PMI(購買担当者景気指数) | 24.8 | 3.3 | 0.65 |
2024/4/24 21:30 | 耐久財受注(前月比) | 27.4 | 3.0 | 0.26 |
2024/4/25 21:30 | 実質GDP | 25.8 | 3.5 | 1.18 |
2024/4/26 12:22 | 日銀政策金利(日本) | 26.8 | 3.2 | 0.44 |
2024/4/26 21:30 | PCEデフレータ | 35.1 | 4.1 | 0.93 |
2024/4/30 8:50 | 鉱工業生産(日本) | 5 | 3.4 | 0.25 |
2024/4/30 21:30 | 雇用コスト指数 | 24.2 | 3.2 | 0.58 |
2024/5/1 21:15 | ADP雇用者数(前月比) | 7.1 | 3.0 | 0.69 |
2024/5/1 23:00 | ISM製造業景気指数 | 14.1 | 4.2 | 2.51 |
2024/5/2 3:00 | FRB政策金利 | 45.2 | 4.1 | 2.04 |
2024/5/2 21:30 | 貿易収支貿易収支 | 11.7 | 3.2 | 0.38 |
2024/5/2 23:00 | 耐久財受注(前月比) | 6.8 | 3.0 | 0.28 |
2024/5/3 21:30 | 雇用統計 | 98.6 | 4.3 | 1.89 |
2024/5/3 23:00 | ISM非製造業景気指数 | 35.8 | 3.6 | 0.84 |
2024/5/10 23:00 | ミシガン大学消費者信頼感指数 | 9.1 | 3.3 | 0.55 |
雇用統計や政策金利の発表時には値動きも大きくなることが分かります。
ただし、例えばISM製造業景気指数や耐久財受注のように一般的に重要度が高いと言われている指標でも、結果によってはあまり大きな値動きにはならない場合もあることが分かります。
経済指標発表時の値幅とスプレッドの関係を下図に示します。
値幅は指標発表が終わった後の結果のため指標発表直後にEAを停める判断はできません。
一方で、スプレッドは常に更新されており、指標発表による変動をいち早く察知し、EAを停止する判断材料に活用することができます。
EAを停めるべきか否かは、スプレッドによって判断できることを実データで確認できました。
では、どの程度のスプレッドの時に止めるべきでしょうか?
以下にドル円の例を示します。
XM スタンダード口座の場合
①デイトレ スプレッド3.2以上で停止(値幅20pips以上)
②スイング スプレッド4.0以上で停止(値幅50pips以上)
③長期 停止なし
このようにスプレッドの大きさから停止するべき経済指標を限定することはEAにとって有効です。
ただし、通貨ペアやブローカーごとに値幅やスプレッドはことなるため、目安となるスプレッドを事前に計測しておく必要があります。
計測用のインジケータを作成しましたので、欲しい方はダウンロードしてみてください。(無料です)
ドル円の過去のデータからスプレッドの大きさによって米国の経済指標のランキングを作成してみました。
1 位 | 雇用統計 |
2 位 | ISM製造業景気指数 |
3 位 | FRB政策金利 |
3 位 | PCEデフレータ |
5 位 | ISM非製造業景気指数 |
上記の通り、雇用統計が一番スプレッドの広がりが大きく、最もリスクの高い米国経済指標であることが分かります。このため雇用統計前はEAは停止しないと予期せぬ損切になることもあるので、危険です。
雇用統計をはじめとする経済指標の前にEA(自動売買)を停めるべきか判断する指標としてスプレッドの広がりを計測することが一つのアイディアであることを紹介しました。
スプレッドは刻一刻と変化するためその時々にトレード可否の判断を下すことができ、大きな値動きに巻き込まれる可能性を下げることができます。
さらに、スプレッドの広がりから重要な経済指標ランキングを作成しました。
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