MT4に必要なPCスペック
MT4(MetaTrader4)は比較的軽量に設計されたFX取引プラットフォームですが、快適にトレードするには一定のパソコンのスペックが必要です。
動作自体は低スペックのパソコンでも可能ですが、チャート表示数やインジケーターの使用数が増えるにつれて、動作に支障が出ることがあります。
まずは最低限必要な取引環境を紹介します。
MT4推奨環境
XMが推奨しているMT4の動作環境は以下のとおりです。基本的にはWindows環境での利用を想定しています。
項目 | 最低要件 | 推奨環境 |
---|---|---|
OS | Windows 7 | Windows 10以降 |
プロセッサー | 2コアCPU(SSE2/AVX対応) | Core i3以上(2GHz以上) |
メモリ | 512MB | 4GB以上 |
ストレージ | 50MB(アプリ自体) | 120GB以上のSSD |
モニター解像度 | 800×600 | 1024×768以上 |
インターネット接続 | ブロードバンド | 光回線(有線接続推奨) |
上記の環境であれば、1〜2枚のチャート表示と数個のインジケーター使用であれば問題なく動作します。
ただし、取引頻度が高く複数通貨ペアを同時に監視するような使い方では、より高性能なスペックが求められます。MT4の使用目的に応じて、必要なスペックは段階的に変わる点に注意が必要です。
自動売買(EA)使用時の推奨環境
自動売買(EA)を使用する場合は、以下の環境が推奨されています。
項目 | 推奨環境 |
---|---|
CPU | Core i5以上(3GHz以上) |
メモリ | 8GB以上 |
自動売買を行う際は、通常仕様よりも安定した稼働が重要視されるためハイスペックになっています。
MT4に必要なパソコンスペック早見表
MT4を快適に使うためには、使用方法に応じたスペックの選定が重要です。
最低限動作する環境だけでなく、チャート数や自動売買(EA)の有無などにより、要求されるパソコン性能は大きく変わります。
そこで本章では、使用状況に応じてスペックの目安を整理していきます。
用途別おすすめスペック(表あり)
用途に応じたスペックの目安を以下の表にまとめました。自分がどのレベルに当てはまるかを確認し、購入や買い替えの参考にしてください。
用途 | CPU(最低推奨) | メモリ | ストレージ | 備考 |
---|---|---|---|---|
軽量 (チャート2枚以下) | Intel Core i3 第8世代以降 | 4GB | HDD可 | 軽い分析やモバイル用途 ノートPCでも可能 |
標準 (チャート5枚程度) | Intel Core i5 第8世代以降 | 8GB | SSD推奨 | インジケーター併用 標準的なトレードに対応 |
高負荷 (EA・多通貨) | Intel Core i7 第10世代以降 | 16GB | SSD必須 | EA複数稼働・長時間運用向け 重負荷なインジケータ |
このように、最低限のスペックでは使えるものの、安定した動作や将来的な拡張性を考えると「標準用途」以上のスペックが安心です。
CPUで第8世代以上を推奨している理由は、第7世代以前のCore iシリーズは、シングルスレッド性能や省電力性で大きく劣り、MT4を複数同時に操作するには十分ではないためです。RyzenシリーズでもRyzen 3 3000番台以降(=第2世代以降)が目安になります。Ryzen 5やRyzen 7もCore i5/i7と同等の性能が得られます。
バックテストや履歴データの読み込みを多用するユーザーは、ストレージはSSDを選びましょう。
表示チャート数・インジケーター数によって必要スペックは変わる
上述したスペック表はあくまでも目安です。
MT4の処理速度や安定性は、表示しているチャートの枚数や、インジケーター・EA(エキスパートアドバイザー)の数や要求性能に大きく左右されます。
MT4はリアルタイムで為替データを処理しており、表示内容が多くなるほどCPUとメモリへの負荷が増します。
MT4が重いのはパソコンのせい?まずは原因究明
MT4が突然重くなった場合、多くの人が「パソコンのスペック不足かもしれない」と考えがちですが、必ずしもハードウェアが原因とは限りません。
まず確認すべきは、MT4の設定や使用状況です。
チャート表示の設定や、インジケーターの数、ネット環境など、ソフトウェア的な要因が動作を遅くしている可能性もあります。動作が不安定なときには、原因を1つずつ洗い出し、無駄な負荷を減らすことが重要です。
ここからは、具体的なチェックポイントと原因を紹介します。
MT4の表示や設定をチェック
MT4が重いと感じたときには、まずMT4の「表示設定」と「インストールしているツール」を確認しましょう。
MT4で確認していただきたいことは以下のとおりです。
- ローソク足(履歴バー数)の表示本数
- 気配値表示の通貨ペアがの数
- チャートの数
- インジケーターやEAの使用数
確認①:ローソク足(履歴バー数)の表示が多すぎる
MT4では、チャートの表示に使用するローソク足の履歴本数(バー数)を任意に設定できますが、この数値が大きすぎると動作に支障をきたします。
特に日足以上の時間軸では、数千本単位の履歴を保持することでメモリ使用量が急増してしまいます。
ローソク足の本数設定は「ツール」→「オプション」→「チャート」バーから変更できます。「ヒストリカル内の最大バー数」と「チャートの最大バー数」はどちらも調整が可能です。
設定項目 | 内容 | 主な影響先 |
---|---|---|
ヒストリー内の 最大バー数 | 過去データの保持量。 EAやインジケーターが参照できる最大数 | バックテスト・EA・インジケーター |
チャートの 最大バー数 | 実際に画面に表示されるバーの最大数 | チャート表示のみ |
まずはチャートの最大バー数を減らすだけでもで、処理が少なく済むのでおすすめです。バックテストや分析のために大量のデータを参照する必要がない場合は、ヒストリー内の最大バーも最小限に減らしてください。
確認②:チャートを開きすぎている
MT4では複数のチャートを同時に開くことができますが、枚数が多くなると処理が分散され、パフォーマンスが低下します。
特にインジケーターやEAが設定されたチャートを複数表示している場合は、チャートごとに描画や演算処理が発生するため、CPUの使用率が上昇します。
チャートを複数開いていると、パソコンの性能によっては動作が重くなることがあります。使用していないチャートをできるだけ閉じてください。
確認③:気配値表示の通貨ペアが多い
MT4の「気配値表示」には、リアルタイムで為替レートが更新される通貨ペアが一覧表示されます。この通貨ペアの数が多いと、それだけ通信処理が発生し、MT4のレスポンスが低下する原因となります。
表示されている通貨ペアが20種類を超えている場合は、必要な通貨のみを表示するように絞ってください。気配値の表示非表示についてはこちらの記事をご覧ください。
気配値ウィンドウ内で不要な通貨ペアを非表示にすることで、通信量と処理負荷を減らせます。また、使っていない銘柄のデータ取得を停止することで、全体の通信安定性も向上します。
確認④:インジケーターやEAを過剰に使用している
MT4では、インジケーターやEA(エキスパートアドバイザー)を追加できますが、処理の負荷によっては使用すると動作が著しく重くなることがあります。
多くのインジケーターは毎Tick(値動きが更新される)ごとにチャート上で計算処理を行っており、数が増えるほどCPUとメモリへの負荷が増大します。EAも同様に、取引条件を常時監視しながら売買を自動で行うため、複数稼働している場合には裏側で大量の処理が発生します。
改善策としては、使用していないインジケーターやEAを削除または一時的に無効化することが有効です。また、動作が軽いインジケーターに差し替えることも検討してください。
ここまでご紹介したことを確認しても、まだMT4が重たい場合は「ネット回線」「バックで稼働している他のソフト」が原因になっている可能性があります。
ネット回線が遅い
MT4はサーバーと常に接続し、リアルタイムの価格更新や注文処理を行っています。インターネット回線が遅かったり、安定していなかったりすると、チャートの表示が遅延したり、注文執行にタイムラグが生じることがあります。
特にWi-Fi接続は電波状況によって通信速度が変動しやすいため、有線接続に切り替えるだけでも改善することがあります。また、他のアプリケーションや端末が同時に帯域を使用している場合は、帯域制限や通信品質の低下を招くため、回線使用状況の見直しも必要です。
速度が安定しない場合は、プロバイダの見直しやVPSの利用も選択肢になります。
他のソフトが重たい処理をしている
またMT4自体の問題ではなく、他のアプリケーションがパソコンのリソースを消費している可能性も考えられます。
特にブラウザで複数のタブを開いていたり、動画編集ソフトやゲームなど高負荷のソフトを同時に起動していると、CPUやメモリの使用率が急上昇します。
タスクマネージャーでCPUやメモリの使用状況を確認し、不要なアプリケーションは終了させるようにしましょう。特に自動アップデート中のセキュリティソフトやバックグラウンドで動作しているクラウド同期サービスなどは、気づかないうちにリソースを消費していることがあります。
それでも解決しないならPCスペックを見直そう
MT4の設定や通信環境を見直しても動作が改善されない場合、パソコンのスペック自体に問題があります。
長期間使用しているパソコンや、スペックが低いノートPCでは、MT4の複数チャート表示やEAの同時稼働に耐えられないことがあります。
ここでは、PCの買い替えやスペック見直しを検討する際のポイントを解説します。
おすすめのスペック
快適にMT4を運用するためにおすすめの基本構成です。
・CPU:Intel Core i5第8世代以上、またはRyzen 5以上
・メモリ:8GB以上(EA使用や複数チャート表示なら16GB)
・ストレージ:SSD 256GB以上(可能ならNVMe接続)
・OS:Windows 10または11(64bit版)
メモリが不足するとマルチチャートやEAの同時使用時に動作が遅延するため、8GB以上を目安にしましょう。特に中・上級トレーダーは、16GBを選択しておくと将来的な拡張にも対応できます。
ノートPCでもデスクトップでもどちらでも良いとは思います。持ち運んでトレードしたい方はノートPC、EAを稼働させる方や家など特定の場所だけで使う方はデスクトップで大丈夫です。
パソコンとVPSならどっちを選ぶ?
MT4をより安定して運用するために、パソコンではなく「VPS(仮想専用サーバー)」の導入を検討するのも有効です。VPSとは、Windowsのパソコンをレンタルして、MT4を動かせるサービスです。
項目 | パソコン | VPS |
---|---|---|
稼働時間 | 自分で管理(電源を入れておく必要) | 24時間自動稼働(常時稼働) |
通信安定性 | 回線や電源トラブルに影響を受ける | データセンターで安定稼働 |
初期コスト | 購入時に高め(数万円〜) | 月額制(低〜中コスト) |
拡張性 | 自由にカスタマイズ可能 | プラン変更で柔軟に対応可能 |
メンテナンス | 自己管理が必要 | 業者がメンテナンス管理 |
レイテンシ | 高くなる場合もある | FX業者の近くのVPSなら低遅延 |
パソコンの場合は、購入に安くても数万円の初期コストがかかるのにプラスして、電気代も結構かかります。一方でVPSの場合は月額料金「数千円」で利用できるためコスパが良いです。
さらにハイスペックのプランも用意されているので、カスタム性も高いです。またサーバーの立地により注文遅延(レイテンシ)を抑えられます。
FX業者によってはVPSの無料提供や割引もあり、特に24時間稼働したい自動売買を使うトレーダーにとっては有力です。
中古PCでもいける?
コストを抑えたい場合中古PCも選択肢としてはありですが、注意点があります。
中古PCの中でも、特にノートPCはバッテリーが劣化しているケースが多いです。バッテリー持続時間が極端に短いと、電源ケーブルに常時接続が必要となり、可搬性が損なわれます。
また、HDDがそのまま使われている場合は寿命に注意が必要です。HDDは使用時間が長くなるほど故障率が高まるため、MT4の動作にも支障をきたす可能性があります。SSDに換装済みのモデル、または換装可能な機種を選ぶと安心です。
中古PCは新品と異なり、購入後に不具合が発生するリスクもあります。そのため、保証付きで販売している業者を選ぶことが重要です。
・最低でも1〜3か月の保証があるか
・返品や修理対応の条件が明示されているか
・企業向けリースアップ品など、使用履歴が明確なモデルか
ネットオークションや個人間売買ではなく、実績ある中古PC専門店や大手通販サイトからの購入が安心です。
まとめ
MT4を快適に利用するには、パソコンのスペックとMT4の負荷の大小のバランスが重要です。
最初に確認すべきは、インジケーターやEAの数、表示チャート、履歴バー数といったMT4内の設定です。これらを調整するだけで動作が改善することも多く、無理にPCを買い替える必要はない場合もあります。
それでも改善が見られない場合は、パソコン自体のスペックを見直すタイミングです。特にメモリ容量は、MT4の動作速度に大きく影響します。また、24時間稼働やEAの運用にはVPSの活用も有効です。