VPSでMT4のEAは何個まで稼働できる?
VPS上でMT4のEAを何個まで稼働できるかは、「VPSのスペック」、「EAの処理負荷」、「MT4の設定」に左右さます。
- VPSのスペック
- EAの処理負荷
- MT4の設定
特に、VPSのCPUの処理能力やメモリの容量が重要な要素となります。
そこで、本記事ではVPSのスペックとEAの稼働可能な個数の関係を解説します。
VPSのスペックとEAの同時稼働数
メモリ (RAM) & CPU別のMT4 & EA稼働数目安
メモリ (RAM) | CPU (コア数 & 周波数) | MT4稼働数 | EAの稼働数 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
2GB | 1コア / 2.0GHz | 1~4 | 5~10 | 軽量なEAのみ。スキャ系には向かない。 |
4GB | 2コア / 2.5GHz | 5~7 | 10~20 | 軽量スキャ・デイトレEAなら運用可能。 |
6GB | 2コア / 3.0GHz | 8~12 | 15~25 | EAの種類によるが、スキャ系ならこの辺りが最低限。 |
8GB | 4コア / 3.0GHz | 10~15 | 20~40 | ブレイクアウト系やスキャ系も対応可。 |
16GB | 6コア / 3.5GHz | 15~20 | 30~50 | MT4/MT5を分散するなら安心。 |
32GB | 8コア / 4.0GHz | 20~30 | 50~80 | ほぼすべてのEAを安定運用可能。 |
64GB | 12コア / 4.5GHz | 30~40 | 80~120 | 高負荷なインジケーターも併用可。 |
VPSのスペックがEAの稼働数を決定する最も重要な要素です。
- CPU:EAの計算処理を担う。高頻度で注文を出すEAはCPU負荷が高くなりやすい。
- メモリ(RAM):MT4は複数のチャートやEAを同時に動かすため、メモリを大量に消費する。
- ストレージ:EAのログ保存やデータ取得に影響するが、CPUやメモリほど重要ではない
一般的に、1GBのメモリで動かせるEAは3〜5個程度とされていますが、CPU性能やEAの種類によってはそれ以上動作可能な場合もある。
逆にスキャルピング系など負荷の高いEAを多く動かす場合は、余裕を持った運用が安心です。
VPSのスペックを選ぶ際のポイント
VPSを選ぶ際には、単にメモリ容量だけでなく、CPUの処理能力やサーバーのロケーションも考慮する必要があります。
EAの稼働数や処理負荷が増えると、CPUの使用率が上昇し、過負荷になるとMT4が遅延したり、最悪の場合クラッシュすることがあります。
VPSを選ぶ際は料金だけでなく、しっかりスペックを確認してください。
メモリだけでなくCPUも重要
VPSの選定時にメモリ容量を重視しがちですが、CPUの性能も同じくらい重要です。EAの動作にはリアルタイムの計算処理が必要なため、CPUが低性能だと以下のような問題が発生する可能性があります。
- 注文の遅延:エントリーや決済のタイミングがずれ、パフォーマンスが低下する。
- MT4のフリーズ:処理能力が不足すると、MT4が応答しなくなることがある。
- サーバーダウン:過負荷がかかるとVPS自体がダウンし、EAの稼働が停止する可能性がある。
一般的に、スキャルピング系のEAはCPU負荷が高いため、複数のEAを動かす場合は高性能なVPSを選ぶことを推奨します。
VPSのロケーションにも注意
VPSの設置場所(ロケーション)もEAのパフォーマンスに影響を与えます。特にスキャルピング系EAでは、ブローカーのサーバーとの距離が短いほど有利になります。
- スキャルピングEA(朝スキャ、ブレイクアウト系):レイテンシーが重要なため、ブローカーのサーバーに近いVPSを選ぶ。
- スイングトレード・デイトレードEA:レイテンシーの影響が少ないため、コスト優先でVPSを選んでも問題ない。
取引サーバーの所在地を確認し、それに近いデータセンターのVPSを選ぶことが望ましいです。
EAの種類 | ロケーションの重要性 | 選ぶべきVPSの場所 |
---|---|---|
スキャルピング | 高い(1msでも短縮すべき) | ブローカーのサーバーに近いVPS(例:ロンドン、ニューヨーク) |
デイトレード | 中程度(数十msの違いなら影響なし) | 価格優先で選択可能(日本国内のVPSでもOK) |
スイングトレード | 低い(通信速度より安定性が重要) | 価格優先で選択可能 |
スキャルピングEAを運用する場合は、VPSのロケーションだけでなく、ネットワークの品質(Ping値や帯域幅)も重要です。
VPSの運営会社によっては、高速な専用回線を提供している場合もあるため、契約前に仕様を確認しましょう。
1つのMT4で複数のEAを稼働する際の注意点
1つのMT4で複数のEAを同時に稼働させる場合、以下の点に注意してください。
- 処理の重たいEAは複数使わない
- スキャルピング系のEAは注意
- 複数EAの注文の干渉
- マジックナンバーの設定ミス
適切な設定を行わないと、MT4がフリーズしたり、意図しない取引が発生する可能性があります。
処理の重たいEAがあるとMT4が落ちる
EAの中には計算負荷の高いものがあり、これを複数稼働させるとMT4がクラッシュすることがある。特に、以下のようなEAは負荷が高くなりやすい。
- Tickデータを頻繁に取得するEA
- 複雑なテクニカル分析を用いるEA
- 複数の通貨ペアを同時に監視するEA
負荷の高いEAを使用する場合は、VPSのスペックを十分に確保し、必要に応じてMT4のプロセスを分けるのが効果的である。
スキャルピング系のEAは注意
スキャルピングEAは短時間で多くの注文を処理するため、VPSの負荷が高くなりやすいです。
下記の点に気をつけてください。
- スリッページ:VPSのレイテンシーが高いと、約定価格がずれる可能性がある。
- サーバー負荷:多くのEAが同時に注文を出すと、VPSの処理能力を超えてしまうことがある。
スキャルピング系のEAを運用する場合は、VPSのスペックを十分に確保し、負荷を分散する工夫が必要になる。
複数EAの注文の干渉
異なるEAが同じ口座で動作している場合、注文が干渉し、意図しない取引が発生する可能性があります。
例えば、同じ通貨ペアを複数のEAが取引すると、ポジション管理が混乱して本来の動作とならない場合が想定されます。
EAがどのようなロジックで売買しているのかを考えて運用するようにしてください。
マジックナンバーの設定ミス
MT4では、各EAの取引を識別するためにマジックナンバーを使用しています。
マジックナンバーが重複すると、異なるEAの注文が混ざり、「他のEAで注文したポジションを別のEAが決済してしまう」など正しく機能しない可能性があります。
複数のEAを運用する場合は、各EAに異なるマジックナンバーを設定して、管理してください。
タスクマネージャーでリソース使用状況を確認
VPSのリソースを適切に管理するためには、タスクマネージャーを利用してCPUやメモリの使用状況を定期的に確認することが重要です。
特に、以下の目安を超えている場合は、EAの数を調整したり、VPSのスペックを見直す必要があります。
- メモリ使用率:50%以下が理想
メモリ使用率が50%を超えると、新たなEAを追加するときにVPSの動作が不安定になる可能性がある。特にMT4はメモリ消費が多いため、最低でも2GB、安定運用には4GB以上のメモリが望ましい。
- CPU使用率:80%以下を維持
CPU使用率が80%を超えると、MT4の動作が重くなり、EAの注文処理に遅延が生じることがある。負荷の高いEAを複数稼働させる場合は、CPUのコア数を増やすか、MT4のプロセスを分散させることを検討する。
タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブで、CPUやメモリの使用状況をリアルタイムで確認できる。また、MT4の「ジャーナル」タブをチェックし、エラーや遅延が発生していないかを確認するのも重要な作業となる。
リソースが不足している場合は、不要なEAやインジケータを停止する、複数のMT4に分けて運用する、VPSのプランをアップグレードするといった対策が有効である。
MT4を軽くしてより多くのEAを稼働させる方法
VPSへの負荷を軽減し、より多くのEAを動作させるためには、MT4の設定を見直す方法もあります。
インジケータや不要な表示を無効にする
MT4は、チャート上に表示されるインジケータの計算処理が多くなると、CPUやメモリの負担が増加します。
そのため、不要なインジケータや水平線などを削除することが軽量化のポイントです。
不要なインジケータを削除する
リアルタイムで大量の計算を行うインジケータ(例:移動平均線、RSI、MACDなど)を多数使用すると、CPU負荷が大きくなる。
そのため、EAの運用に不要なインジケータは無効化し、できるだけシンプルな環境でEAを動作させるようにしてください。
チャートの描画負荷を減らす
- ヒストリカルデータの表示範囲を短くする
チャートの過去データを多く表示すると、描画処理の負荷が増加する。- MT4の「ツール」→「オプション」を開く
- 「チャート」タブで、「最大バー数」を適切な値(例:5,000~10,000)に設定
- 不要なオブジェクトを削除する
チャート上のトレンドラインやテキストなどのオブジェクトも負荷の原因になる。定期的に整理し、必要最小限のオブジェクトのみを表示してください。
これらの設定を行うことで、CPUやメモリの使用量を抑えつつ、より多くのEAを稼働できます。
通貨ペアの表示を制限する
MT4では、デフォルトで多数の通貨ペアのデータを読み込み、リアルタイムで更新しています。
この動作がVPSのメモリやCPUに負荷をかけるため、必要な通貨ペアのみを表示し、不要な通貨ペアの更新を停止することが軽量化の鍵です。
不要な通貨ペアを非表示にする
- MT4の「気配値表示」ウィンドウを開く(Ctrl + M)
- 使用しない通貨ペアを右クリックし、「非表示」を選択
- 必要な通貨ペアのみ表示させることで、リソースの消費を抑える
特に、EAが使用しない通貨ペアを多数表示していると、サーバーとの通信が増え、VPSの負荷が高くなります。
定期的に取引する通貨ペアのみを残し、不要なものは非表示にすることで、動作を最適化できます。
チャートの数を最小限にする
MT4では、開いているチャートの数が増えると、それぞれのチャートでデータの更新が行われるため、メモリ消費量が増加します。
特に、複数の時間足を同時に開くとCPU負荷が増すため、EAの運用に必要なチャートのみを表示することが望ましいです。
- 使わないチャートは閉じる
チャート上で右クリックし、「閉じる」を選択 - 1つの通貨ペアにつき、1つの時間足を基本とする
例えば、同じ通貨ペアで5分足、15分足、1時間足をすべて開くのではなく、EAが動作する時間足のみを残す
こうした設定を行うことで、MT4のメモリ消費を大幅に削減でき、より多くのEAを安定して稼働させることが可能です。
まとめ
VPSでMT4のEAを安定して稼働させるには、適切なスペック選びが重要です。
その中でも、CPUとメモリのバランスが重要になるので、どちらもよく確認してからVPSを選んでください。
また、EAの処理の負荷の大きさによっては、あまり多くのEAを運用できない場合もあります。特にスキャルピング系などの「常時計算が必要で注文を繰り返すEA」は余裕のあるVPSのスペックを選択してください。